火種

例えば何かを燃やす時、必要なのはマッチとかライターの小さな火で十分。太陽と虫眼鏡さえあれば、燃やすことができる。最初はそんなもん。目に見えるか見えないかの小さな火だってそれは人を暖めることのできる、脅威となる大きな火になる。そこに火を煽る「何か」があれば。そこに燃えやすい「何か」があれば。
出会いだって最初は小さな火。些細な言い争いだって、それは小さな火。そこに「何か」があるかどうかの違い。激しく燃え上がるための「キッカケ」さえあればそれはすべてを包み込み燃える。その人の過去であったり。その人の社会であったり。その人の未来さえも飲み込む。それが、暖めるための暖炉のやさしい火なのか、すべてをなくそうとする放火に似た悪意に満ちた火なのか、その違い。出会いとけんかの違いなんてそんなもん。最初は小さな火をどういった目的で大きくするか、その違い。すべてを包み込む火さえも、時に人は喜び、時に人は憂う。過去、現在、未来さえもすべて取り込まれる。それが燃え上がった火がもつ力。