手の届かないところ

いくら手を伸ばしても、僕にはつかみ取れない物事がたくさんあって。たとえばリストラされたお父さんの絶望感とか、パンクしてて籠もない自転車の喪失感とか。僕の許容範囲を超えた悩みというのが世の中にはうごめいている。
今まですぐ近くにあったと思っていた関係性は、実は僕とはかけ離れたところに存在していて、僕の意思とは無関係にどんどん進む。光か影か。どちらが光なのか影なのかはまだわからないけど。次に進むことは、何かを変えること。何かを落とすこと。僕はその侵略を止めることも、落としたものを拾うこともできない。僕はあくまで受身であって、あくまで傍観者。けれどその進行は確実に僕を巻き込む。僕を奥を巻き込んで、僕を排除する。
いつも僕がいると思っていたところは、僕のいないところでどんどん進む。