ありがとう

ドーナツ屋を尻目にもう一つのバイトへと足早に向かう。後輩君が働いているのを尻目に早歩きで駅へ向かう。切符を買おう。財布を出そう。当たり前の思考回路。いつもと同じ動作。
いつもと違うことがひとつだけ。ない。財布がない。いつもと同じ場所に、あるべきそれはない。いつもと違うところに置くのはやっぱよくない。財布がない。お金がない。切符が買えない。当たり前の思考回路。いつもと違う焦り。家に帰って財布を取ってこようか。いやそんな時間はない。じゃあどうする。受験生もびっくりの頭の回転の速さ。難しい数学をとくかのようにぐるぐる回る。
そうだ。後輩君がバイトしてた。借りよう。当たり前の思考回路。驚くべき帰結。足早に向かう先はドーナツ屋。一目散で後輩君のとこへ。
ほんとにありがとう。バイトも遅刻せずにすみました。ちゃんと返しますんで。ありがとう。